臓器切り出しマニュアル

総論
 特に手術材料や解剖例の診断では,病変がどの範囲に存在するかを決めること,言い換えれば,病変の座標ないし存在範囲を定めることが非常に重要です.病変の存在範囲が分かれば,断端の判定はおのずと可能になります.
 診断可能な切り出しを行うには,まず肉眼所見が適切に取られていることが必須です.病理医の本当の仕事は顕微鏡を覗くことではなく,肉眼所見を正確に記載すること,と考えます.具体的には病変の場所,大きさ,割面の性状(色,硬さ,壊死の有無など)に着目すると良いでしょう.そして写真撮影,つまり記録を残すことも非常に重要です.検体全体,病変の接写,割面の写真くらいは撮影すべきでしょう.
 どの臓器であれ,根拠に乏しく,理由付けの出来ない切り出し方は避けるべきです.

消化管癌切り出し全般
 深達度が最も重要です.粘膜面での病変の広がり(言わばx, y軸),深達度(言わばz軸)が分かれば,病変を3次元的に把握できたことになります.粘膜面だけでなく,漿膜面の観察も大事です.もし病変の漿膜面が混濁していれば,最低でも筋層までの癌浸潤が予想されます.粘膜面だけでなく,漿膜面の写真撮影もして下さい.割面を作ったらよく観察して,癌の深達度の見当をつけます.肉眼で深達度を予想して,それを組織で確認するという考え方が大事です.

各論
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