病理診断センター化構想
病理学医の不足は深刻です.群馬県には学会認定を受けた病理専門医 が30人しかいません.群馬県の人口が約200万人ですから,単純計算で 病理医一人が6.7万人の診断を担わなくてはいけません.そして,さら に問題なのは病理医の偏りです.前橋には群馬大学があるため,病理専 門医の数が多く県内病理医の半数15人がいます.前橋の総人口は約28万 人ですので,一人が約1.9万人の病理診断を行えばよいのです.一方, 前橋以外に住む群馬県の病理専門医は,単純計算で11.5万人の病理診断 を担わなくてはならないのです.これほど地域格差があるので,前橋に 住む病理専門医は,病理医のいない地域へ出張しなくてはならないので す.現実に私は前橋から遠くはなれた館林(自動車で片道2時間弱), 原町(自動車で片道約1時間),富岡(自動車で片道約1時間)へ行き診 断業務をしています.このように移動時間が長く,診断時間を割かれる のは大変問題です.何らかの,良いシステムを構築して,少ない病理医 で県内の病理業務を回していかなくてはなりません.私が思うに,病理 診断センターの設立がこの問題を解決する方法かもしれません.それで は,病理診断のセンター化により,どの様なメリットが生まれるのでし ょうか.現在,病理医不足により,病院に勤務する病理医は1人のみの 場合(いわゆる1人病理医)が多いのが現状です. 1人病理医が診断に 迷った場合,自由に職場を離れられる仕事環境であれば,他院に出向き セカンドオピニオンを求められるのですが,通常,職場を離れることは できず,セカンドオピニオンを求め辛いのが現状です.また,仮に病理 検体数が少なく,時間に余裕のある病理がいても,自分の勤務している 病院を抜け出して,他の病院の病理医を手伝ってあげることはできませ ん.そして,この様に時間的余裕のできる病院が少なからずあるという のが現実です.ただでさえ少ない病理医が,その力を十分に発揮できず, 地域の医療のニーズに応えられていないのです.病理診断センターが設 立できれば,5つの病院を5人の病理医で診断できるという環境の構築が 可能で,診断に苦慮した場合でも,隣にいる病理専門医に意見を求める ことができます.また,仕事量の格差を軽減でき,個人個人の能力を余 すことなく最大限に利用できるのです.診断レベルの向上は,まさに患 者さん達の望むものではないでしょうか. |