電子顕微鏡観察
病理医は時には電子顕微鏡を使用して,細胞の超微構造を観察するこ ともあります.電子顕微鏡は光線の代わりに電子線を使用し,真空状態 の中で標本を観察します.電子顕微鏡の試料作成はパラフィン標本と同 様,固定→包埋→薄切→染色の過程を経ますが,それぞれの方法が異な ります.私の研究室では固定にはエリザベス固定液(1%グルタールアル デヒド,4%ホルマリン,0.1Mリン酸緩衝液)を用いて,標本採取後,迅 速に固定します.固定した電顕試料は,アルコールで脱水後,パラフィ ンではなくエポキシ樹脂で包埋します.エポキシ樹脂はパラフィンより ずっと固いものです.この固い樹脂で試料を固めることで,0.05〜0.1μm といった超薄切片の作成が可能となるのです.電顕観察をするための超 薄切片を作成する前に,もう少し厚めの切片を作成し,トルイジンブル ーで染色後,光学顕微鏡で標本を観察します.これは標本内に狙った病 変があることを光学顕微鏡で確認した後で,電顕用の標本を作製するか らです.電顕用の超薄切片も,染色しなくては電顕で観察できません. 超薄切片を金属メッシュに貼り付けた後,酢酸ウラニル,鉛を用いた電 子染色を行い,電子顕微鏡で観察します.電子顕微鏡は,暗い部屋で観 察します.これは観察に蛍光板を用いるので,明るい部屋では観察でき ないからです.しかし,この蛍光板による観察では,あまり画像解像度 が良くないため,自分の観察したい場所をある程度大まかに特定し,写 真撮影後,詳細な構造を観察します.引き伸ばすことで,観察していた 拡大より,数倍大きくして電顕像を観察することができます.このよう にして,超微構造の観察を行います. |